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2021/01/07プロフェッショナルに聞く

【プロフェッショナルに聞く】Vol.2 畠山勝太

 

「プロフェッショナルに聞く」では教育を軸に活動されているプロフェッショナルたちに、教育領域における活動内容、教育領域に関心を持ったキッカケ、課題に感じていること、そして今後の活動ビジョンについてインタビューします。

 

今回は、博士課程で研究をしながら、国際機関のコンサルタント、NGOの理事、そしてARROWSのサービス“多忙解消委員会”のメンバーとマルチに活躍されている畠山 勝太(はたけやま しょうた)さんにお話を伺いました。

 

–まず現在、畠山さんが普段どのような活動をされているか教えてください

 

「ネパールのNGOの理事」、「博士課程での論文執筆」、そして「国際機関でのコンサルタントとしての業務」と主に3つのフィールドで活動しています。

 

ネパールのNGOでは、「読書活動の推進」と「幼児教育の調査」の2本柱で取り組みを行っています。貧しい国で、学校にも家庭にも本がないため、本を配り、現地の社会福祉系のボランティアの大学生に研修をして、絵本の読み聞かせをしてもらっています。子どもたちに読書習慣を身に着けさせると共に、それ以降の学びに繋がる土台を作ることを目的としています。また、NGOの代表がユニセフのネパール事務所の幼児教育専門家なので、連携して調査を行い、効果的な打ち手を分析しています。

 

博士課程は、アメリカのミシガン州立大学教育大学院・教育政策コースに在籍しています。研究内容は途上国における障害児の教育へのアクセスと学習の状況の分析です。健常児と比較して、障害児の教育機会の損失がどの程度起こっているのか?を定量的に分析したうえで、「損失があるとすれば何が要因なのか」を調査しています。例えば、都会の場合富裕層の障害児の子どもは、私立の特別学校への入学機会を持てますが、貧困層や農村部はアクセスが難しいといったことが要因として挙げられます。そのような分析の上で、今後、ユニセフに戻ることを念頭に置きつつ、「どの様な対策が考えられるか」を検討しています。

 

国際機関での最近の仕事としては、ネパールの幼児教育における教員政策を世界銀行のコンサルタントとして分析していました。どのような対策を打つと費用対効果が高く、教員の資質向上が実現できそうかといったことを、色々なモデルを組んで分析をしました。最近、日本でも少人数学級の議論が盛んですが、教員数を増やすと経常コストが跳ね上がるのであまり現実的ではありません。結論として、一番コストパフォーマンスが良いのは、幼児教育施設を10~20箇所程度回り、課題に対応するアドバイザーを置くことだということが分かりました。この方法の場合、経常コストもあまり増えず、国際的に見ても一定効果があることが分かっています。

そもそも、「なぜ幼児教育の質を上げる必要があるか」というと、ネパールの場合、小学校1年生の留年率が20%程度あります。小学校での留年が増えると、それだけ教員数を増やさないといけなくなるわけですが、留年率が高い要因として、「学校で学ぶための準備が不十分である」ということが挙げられます。幼児教育においてアドバイザーを入れて、教員の資質向上を行い、小学校の留年率を下げることで、幼児教育から小学校までトータルで見ると、低コストなモデルが実現できます。

 

国境に囚われず、子どもたちの受ける教育の質を向上させることを軸に活動しています。

 

–教育フィールドに興味を持ったきっかけを教えてください

 

中学生のときに「命のビザ」で知られる外交官 杉原千畝氏のドキュメンタリーを見て、外交官・国際機関を目指すようになりました。また、父親が教員だったこともあり、教育への興味や教育行政への課題意識をもともと持っていました。特に、自分が育った地区は、経済的に厳しい同級生も多く、地元のサッカーチームではメンバーのうち約半分が高校を中退していました。そのような中、弱い立場・苦しい環境におかれている人を助けたいという想いが強くなり、最終的に、今の教育と国際協力の分野での活動に至りました。

 

–学校教育において課題だと思われていることを教えてください

 

“多忙解消委員会”に入ったきっかけでもありますが、日本の先生は忙しくなり過ぎていると思います。国際学力調査を見ると、日本は貧富の差が教育格差に反映されづらいことが分かっています。つまり、「公教育の質が高い」と言えます。

それはなぜかと言うと、欧米諸国と比較して「教員のプロフェッショナリズムが高い」ことが要因の1つだということが分かっています。専門職として、自主研修などを通して自身の能力を高め、業務へ反映することが先生方の間に浸透しています。

しかし近年、教員の業務が増えたことで多忙になり、自主研修への参加率が低下しています。日本の高い教育水準を維持している教員の能力が低下すれば、必然的に日本の教育力は低下するでしょう。天然資源が乏しい日本では、国力が個々人の生産性に依存しているため、教育水準の低下は非常に大きな課題です。教員の多忙は必ず解決しなければいけない国家としての重要な課題だと思っています。

 

–多忙解消委員会の活動に参加した経緯と活動内容を教えてください

“SENSEI ノート”※を知って素晴らしい活動をされていると感銘を受け、あるメディアでの記事で取り上げさせてもらいました。その記事を見たARROWS社長の浅谷さんと出会い、その後“SENSEI 多忙解消委員会”の設立時に誘われて、二つ返事で参加を決めました。

 

“SENSEI 多忙解消委員会”での担当業務は、データ分析のモデルづくりです。学校の健康診断を通して、各学校の勤怠情報と調査項目のデータが集まります。そのデータを用いて、統計分析を行い、学校の環境要因に左右されず多忙を解消出来ている学校、つまり自治体内でモデルとすべき学校をあぶり出しています。

一見、勤務時間が短い学校が多忙を解消できている良いモデル校だと思えますが、コトはそう単純ではありません。例えば、単純に困難な家庭環境下の子どもが少ないため、相対的に勤務時間が短いだけもしれません。他にも、市内の傾向としては若手の先生が多いと勤務時間が長くなる傾向があるとしたら、単純に勤務時間だけ見ると長いものの、若手の先生が多いことを考慮し、勤務時間をだいぶ抑えられている学校もあるかもしれません。

“学校の健康診断”では、短期的には自治体や学校の個別業務課題を見える化して、それに対して対策を打つと共に、「多忙を上手く解消できているモデル校」を統計的に見つけ出します。そして、そのモデル校を支える業務のメカニズムを明らかにして、市内で横展開することで効率的に多忙解消を進めていきます。

 

–今後の活動ビジョンを教えてください

 

日本全体に”学校の健康診断”を広げることだと思っています。データを元に先生たちの多忙を解消する、これは実現可能だと確信しています。

あとは、早く多忙解消を実現するために、より多くの自治体に取り組みを広げていきたいです。より多くの自治体で教員の多忙が解消されることで、日本全体の教育を底上げする一助になればと思っています。

そして、近い将来日本の良質な教育ノウハウを海外へ輸出することまで目指せたらと思っています。