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2021/01/07プロフェッショナルに聞く

【プロフェッショナルに聞く】Vol.1 鬼澤秀昌

 

「プロフェッショナルに聞く」では教育を軸に活動されているプロフェッショナルたちに、教育領域における活動内容、教育領域に関心を持ったキッカケ、課題に感じていること、そして今後の活動ビジョンについてインタビューします。

 

今回は、自身の事務所”おにざわ法律事務所”の代表を務めながらNPO団体で活動、そして多忙解消委員会の理事でもある鬼澤 秀昌(おにざわ ひでまさ)さんにお話を伺いました。

 

–まず現在、鬼澤さんが普段どのような活動をされているか教えてください

弁護士として自分の弁護士事務所を運営していまして、主に教育分野やNPO団体の支援を中心に活動しています。6,7割くらいは教育分野の案件で、NPOと組み合わさる場合とそうでない場合がありますね。

 

教育関連の案件でいうと、弁護士は、子どもの権利の代弁者として学校と戦うか、学校側に立って保護者を相手にするか、どちらかの立場に寄ることが多いのですが、それとは違うスタンスでも活動しています。NPO団体での活動を通すことで、保護者・学校両サイドの話を聞くことができますし、この”SENSEI 多忙解消委員会”の活動では、「現場の先生がどれほど忙しいか」を理解することができます。NPOから取り組みを広めてきたため、子ども・保護者と学校という二項対立に陥ることなく活動することが出来ています。今の自分のスタンスはNPOでの活動を通して定まったところもありますね。もしNPOという切り口を持たずに入ってたら今のポジションは作れなかったと思います。

 

–教育やNPO活動に興味を持ったきっかけを教えてください

もともと、大学時代はビジネス法務で企業をサポートできたらと思っていました。ただ、ビジネス法務はお金を持っている企業の手助けしかしない印象でした。その構造にいまいちピンと来ていませんでした。

一方で、当時はNPOは継続性がないというイメージがありましたし、家庭教師の経験から、その時点で勉強と違うことに興味がある子どもに無理やり勉強をさせることにも違和感があって。教育分野もあまりしっくり来ていなかったです。

 

自分の進路について考える中で、ある日TABLE FOR TWO(TFT)の活動を知りました。TFTとは、「先進国の私たちと開発途上国の子どもたちが食事を分かち合う」というコンセプトで活動されているNPO団体です。具体的には、肥満や生活習慣病予防に効果的な食事や食品を購入すると1食につき開発途上国の子どもたちに給食1食分届く仕組みです。関わる人全員がハッピーになるWin-Winの仕組みがあることに衝撃を受けて、NPO活動に関心を持ちました。

 

その後、Teach for Japan(以下、TFJ)の当時の代表であった松田悠介氏のお話を聞いたことで転機が訪れました。活動内容を知る中で、直感的に「自分もやりたい」と確信して、説明会へ足を運んだ後、ボランティアでお手伝いするようになりました。その後、司法試験合格のタイミングでご縁があって、TFJの職員として1年働きました。非常に有意義で楽しかったのですが、教育分野に興味はあるものの、本当にそのままで良いのか、もやもやしていました。

 

先生支援に興味を持ったきっかけは、司法修習生の期間でTFJで一緒に活動していた先生と教育系の裁判例を議題に勉強会をしたことです。それがとても面白く、外部の立場から先生、子どもたち、そして彼らを支援するNPOを支援することが自分に合っているなと思いました。

 

そして、TMI総合法律事務所という企業法務系の法律事務所で3年働いた後、100%の時間をNPOや教育分野に捧げることが出来るよう、独立して今に至ります。

 

–学校教育において課題だと思われていることを教えてください

とにかく先生のやることが多すぎると思っています。特に生徒が何かしら事件に巻き込まれたときに学校や先生の責任が問われたりしていますが、正直そこまで責任を負うのは難しいなと思うようなことも多々あります。

 

学校として業務を削減しようとしても、地域住民や保護者との関係性から削減が難しい事も多くあります。その上、学習指導要領の改定とともにプログラミング教育や英語教育なども乗っかってきている状況で、先生のやることはますます増えています。

 

また、学校に関わる弁護士の経験からお話すると、いじめによる重大な事態が発生した際の報告書を見ると、「先生の多忙が原因で対応が遅れた」と記載されているケースが多くあります。本来、子どもたちの小さな変化に気づくべきだったが、多忙で心に余裕が無いと、中々難しいと思います。多忙が原因で、「本来目を向けるべき重要な事柄に集中出来ていない」というのは間違いなく起こりうるケースだと思っています。

 

多忙を解消するためには、「業務の取捨選択」が重要になりますが、学校の場合は地域住民や保護者などの方々から同意を得ながら進めていく必要があります。コミュニティスクールなどで、地域や保護者の意見をもっと取り入れることが推進されています。それは重要なことですが、一方で、地域や保護者からの意見に対して、「学校側で対応するのは難しい」とは、なかなか言いにくい立場にあるのではないでしょうか。そのため、“学校の健康診断”で取得しているような客観データを用いた分析は地域・保護者も巻き込んで、合意形成を進める上で重要だと考えています。

 

–多忙解消委員会の活動に参加した経緯を教えてください

“SENSEI ノート”※を知って、弁護士でも入れないかと問い合わせたことでARROWS代表の浅谷さんと接点を持ちました。面白いサービスだなと知的好奇心で問い合わせたのですが、先生専用のサービスなので入れませんとバッサリと断られました笑。

 

その後、勤め先の法律事務所から独立したタイミングで“SENSEI 多忙解消委員会”がクラウドファンディングで資金集めをされていることを知りました。応援メッセージとともに支援したところ、「法務周りをぜひ手伝ってほしい」とお願いされて今に至ります。

 

–今後の活動ビジョンを教えてください

“SENSEI 多忙解消委員会”で提供しているサービス”学校の健康診断”を最終的に公共財という形で全国の自治体が活用できる状態に持っていくことがベストだと考えています。今は委員会メンバーが現場に入って先生たちの悩みを吸い上げながら内部から変革を促す方法を取っています。しかしながらそれでは全国にある各自治体を物理的に見切れないので、自治体自身が取得したデータを自発的に活用できる仕組みづくりが不可欠だと考えています。

日本全国の1,800自治体は、規模も違えば、地域性も全く違います。そのため、国で細かいところまで方針を決めることには限界があります。文部科学省が予算配置をする一方で、教育委員会や学校が持つ裁量をうまく生かして、改善を進めていく必要があると思っています。

 

また、弁護士としての立場からお話すると、法制度の何を変えるべきか検討して、多忙解消に寄与できればと思っています。事業と行政、教育現場、そして先生方の働き方にアドバイスできる弁護士はかなり少ないと思っています。私自身、“SENSEI 多忙解消委員会”の活動を通して知見を得て、先生の多忙という課題の解決に切り込んでいきたいです。